りりらぼ

Noteのようなもの。教育、保育、遊び、学び、問い、哲学…それぞれが絡んでいる日々を綴ります。 Education, childcare, play, learning, questions, philosophy … Spell out the days that each is involved.

授業や評価のあり方にも変革を

メモ的に。

参考として

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 授業や評価のあり方にも変革を

無藤 隆FBより引用

背景
 新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」を通して、これからの社会に求められる資質・能力を育もうとしています。従来の学習指導要領では「生きる力」と表現されてきた資質・能力の考え方を土台に、一層踏み込んだ形で学校教育や学力のあり方までが発展的に示されました。就学前から高校まで、学校種を超えた子どもの学びが連続的に捉えられたことも、大きな特徴です。


 改訂の背景にあるのは、社会の急速な変化に伴う危機感の強まりです。我が国は、少子高齢化や財政難といった様々な課題を抱え、加えてグローバル化やAIを始めとした科学技術の発展など、様々な変化の影響を受けています。今後は、仕事においても日常生活においても、多様な国の人々と協働することがより一般的になるとともに、既に得た知識がすぐに通用しなくなってしまうでしょう。定年が延びて働く期間が長期化すれば、その間に仕事の中身や進め方は変わっていくでしょうし、寿命が延びるほど、社会の新たな変化に対応しなければならない期間も長くなります。そうなると、高校や大学までに学んだ知識・技能だけで生きていくことは難しく、生涯にわたり学び続けることがますます求められるようになります。しかも、生きるために必要不可欠となる点で、余暇的な要素が強かった従来の“生涯学習” とは、切迫感が異なります。


 このことは、住んでいる地域や、勤め先の職種・規模にかかわらず、誰の身にも起こり得ますし、既に起きている問題でもあります。例えば、家を建てる際には、設計士も大工も、年齢に関係なく、新しい素材や道具を使いこなすために日々現場で学びながら働いているのです。そうした変化は、今後かなりの速度で進行していくことが予測されています。
 そうした中、従来の積み上げ型の学びには限界が生じています。これからも知識・技能を積み上げる学びが必要なことには変わりませんが、それだけでは新たな変化には対応しきれず、自ら学ぶ姿勢や力をつける教育が求められています。また、e ラーニングやデジタル教材など、学習手段が多様化し、学習状況の個人差が広がる中で、公教育にしかできない教育のあり方も問われています。


 そうした状況下で示されたのが、「主体的・対話的で深い学び」を通して、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力・人間性等」という資質・能力の3つの柱を育成する学びの方向性なのです。

 

 

それぞれの学びのあり方
 「主体的・対話的で深い学び」の実践は、既に取り組んでいる小・中学校は多いものの、海外の先進的なところを比較すれば、まだこれからというのが実情です。「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018」の結果を見ると、「主体的・対話的で深い学び」の視点での授業改善やICT活用の取り組みが十分ではない実態が浮かび上がっています。
 その最たる理由の1つは、教員の多忙化により、授業準備などの時間が十分に確保されていないことです。TALIS2018の結果では、教員の仕事時間は参加国中で最長であり、人材不足を感じる割合も高いことが分かりました。


 「主体的・対話的で深い学び」を巡る議論でも、総論では大多数が賛成であるものの、現実的には授業時間が足りなくなるから難しいといった声をよく聞きます。しかし、授業ごとではなく、単元単位で捉え、単元の中に能動的な活動を意識した学びをいくつか取り入れる形であればできるはずです。また、子ども同士で議論したり、校外で調査をしたりするといった活動は好ましい学習方法ですが、教室の中で黙って考える場合でも、能動的に思考しているのであれば、それは見えないけれども「主体的・対話的で深い学び」であり得ます。


 つまり、「主体的・対話的で深い学び」は、かける時間の長さではなく、資質・能力を高めるための指導の工夫の1つと捉え、教員がいかに効果的に働きかけるかが大切なのです。
 では、どのような働きかけがそうした学びをもたらすのか、それぞれの要素を見ていきましょう。


◎主体的な学び 
 子どもが見通しと振り返りを持って学べるようにすることです。

「今日は何を学ぶのか」「単元全体のどこに位置づけられるのか」といった見通しを持たせます。指導案を作成する際の「本時の目標」や「単元計画」を子どもに伝えるイメージです。

授業の最後には、「何を学べたか」「何を考えたか」などを振り返らせます。

 


◎対話的な学び
 人とのやり取りを通した学びであり、自分の思いや考えをいかに表現するかを、子ども自身にしっかりと考えさせることが大事です。

これまでは教員が板書していた内容を、子どもがグループで話し合うなど、情報を共有して対話を深め、内容をまとめて模造紙やホワイトボードに書く学習をイメージするとよいでしょう。ICTを使った思考ツールがいくつも登場しており、タブレット端末を用いると一層、効果が高まります。


◎深い学び
 学びの本質に迫ったり、ほかの学習内容と比較して関係性を考えたりして、問題解決に向かわせる学びです。単に個別の知識として学ぶのではなく、「なぜそれが起こるのか」「どういう性質があるのか」など、得た知識を使って概念的に説明したり、日常生活の中での応用を考えたりする姿です。そうした深い学びを通して、新学習指導要領の目標等で示された教科ごとの「見方・考え方」を深め、問題解決力を高めていきます。

 

 

「見方・考え方」の意味
 「見方・考え方」は、これからの授業改善を考える上で極めて重要な概念で、新学習指導要領でもすべての教科等で整理されています。「主体的・対話的で深い学び」のねらいは、資質・能力の3つの柱の育成であることを先に述べました。資質・能力は、教科横断的で汎用性があり、教科等の具体的な内容を学ぶ中で育まれていきます。教科にはそれぞれ固有の知識や考え方があるため、それらを捉える枠組みとして「見方・考え方」があります。
 例えば、理科で電気について学ぶ際、電流や電圧、抵抗などの概念を理解し、「電気とはこういうものだ」と、その性質の本質を捉えられると、理科の「見方・考え方」が深まっていきます。すると、日常生活において応用が可能になり、高圧線に止まっている鳥が感電しない理由や、電化製品に付属するアースの役割が、同じ電気の性質を基に説明できることに気づくことができます。
 「学校で習うことは、日常生活には役に立たない」と言われることもありますが、それは、学習内容が個別の知識にとどまっており、問題解決を可能とするレベルの「見方・考え方」に至っていないことが原因です。教科等で体系的に学んだ知識や考え方を、別の場面で問題解決の道具として使うことが「見方・考え方」であり、そうした知識や考え方を汎用化して問題解決を試みることで、資質・能力がさらに高まり、新たな資質・能力が育まれ、それによって「見方・考え方」は一層豊かになります。
 極端な言い方をすれば、難しい電気回路記号の書き方を忘れてしまっても、切れている電線になぜ触れてはいけないかが分かり、実際に近づかないことの方が大切なのです。

評価のあり方
 「主体的・対話的で深い学び」の実践に伴い、評価のあり方も変わります。評価の観点は、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の3つです。評価活動自体は、毎時間行う必要はなく、基本的に単元単位で評価するとよいでしょう。
 以下、3つの評価の観点のポイントを示します。
◎知識及び技能
 個別の知識だけではなく、各知識のつながりなどを問うことも大切となりますが、従来の作問の考え方で十分対応できるでしょう。
◎思考力、判断力、表現力等
 それぞれを別々ではなく、セットで評価します。レポート作成やスピーチなど、ある程度自由度を持たせたパフォーマンス課題を行うとよいでしょう。形成的評価として機能させるため、単元の最後に実施するよりは、単元の3分の2程度を終えた段階で評価し、残り3分の1で補足のノートや提出物のチェックでも評価できますが、時間や労力の負担が大きいことから、パフォーマンス課題による評価を基本とするのがお勧めです。パフォーマンス課題は必ずしも担任が作成する必要はなく、教育委員会や企業が用意したものを活用すれば、空いた時間を授業準備などに充てることができます。
◎主体的に学習に取り組む態度
 ややイメージしづらいですが、評価のポイントは2つあります。1つは、学習に粘り強く取り組めているか、もう1つは、自らの学習状況を目標に照らし合わせて把握し、学習の進め方などを調整する態度やスキルを発揮しているかです。自己学習力、自己調整スキルとも言えるでしょう。
 例えば、作文の学習では、調べ学習の結果をどのように整理してまとめたか、作業時間を調整しているか、改善できそうな部分を子ども自身が考え、判断して書き直したか等を評価します。そうした態度やスキルは指導が可能であり、どのタイミングで行うとよいかを教員が教えることで、子どもはやがて自分自身で行えるようになります。
 上記2つのポイントは、学びの中で相互にかかわり合いながら立ち現れるので、机間指導などを通して、子ども個々の姿を見ていくことになります。指導の勘所は教科ごとに異なりますから、教育委員会が研修を実施することも必要でしょう。

指導力向上にむけて
 教育現場において働き方改革が進められていますが、業務を軽減させながら、いかに授業準備の時間を確保するかは、教育委員会を中心に検討を要する喫緊の課題です。
 抜本的な解決には、教員の標準定数の見直しという国家レベルでの改善が必要です。また、それを補完するために講師や各種スタッフを確保する際にも、自治体の規模や財政力に依存する面があります。
 教育委員会にぜひお願いしたいのは、時間という最も重要な資源を有効活用する方法を考えることです。カリキュラム・マネジメントの中に働き改革を位置づけることで生み出された時間を、有意義な活動に配分することに努めてください。
 その意味でも、「主体的・対話的で深い学び」やその評価についての体系的な研修計画を立てることはとても重要です。研修目的によっては、大規模な集合研修を小規模で実践的な研修に変えることで、教員の学びがより深まるでしょう。また、個々の教員が自己裁量で行う研修も奨励しましょう。そのためには、実際に力をつけた教員の処遇を改善するなど、キャリアアップの仕組みを見直すことも必要です。
 「主体的・対話的で深い学び」の実践を、学校だけで取り組むのは限界があります。それぞれの地域で期待する人材を育てるためにも、自治体の首長から教育長、教育委員会の学校指導管轄の管理職も含めて関係者が共通の問題意識を持ち、それを校長を始めとする現場に伝え、皆が一体となって取り組むことが、今後ますます大切になるでしょう。