特別の教科 道徳 スタートガイド|「道徳科」を始めよう!STEP2
道徳科の目標
道徳科における学習
この先生、大切なところ抑えるけど読み取りが深いし、丁寧なアナウンス。
ゆえに語りの言葉が多くなって複雑に聞こえる。
もう少し図解したり、シンプルに大切なとこ伝えてほしい。
こっちのがわかりやすいな!
https://www.nichibun-g.co.jp/library/e-other/e-other18_tokuda.pdf
道徳の時間は,「特別の教科 道徳」(以下,道徳科と呼びます)とされ,新しい目標が示されました。では,これまでの目標と,どこが変わったのでしょうか。これまでは,道徳の時間は「道徳的実践力」を育てるとされていましたが,道徳科では,「道徳性」を養うことと示され,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の目標と同じになりました。
道徳的実践力も道徳性も,共に,将来出会うであろう様々な場面において適切な道徳的行為を選択するための内面的資質ですから,分かりやすく統一されたのです。
また,道徳科の時間は,道徳の時間と同様,教育活動全体で行われる かなめ 道徳教育の要の時間として,「計画的,発展的な指導による補充,深化, 統合」する役割があります。
学習指導要領によると,道徳性とは,「人間としてよりよく生きよう とする人格的特性」であり,「一人一人の生徒が道徳的価値を自覚し, 人間としての生き方について深く考え,日常生活や今後出会うであろう 様々な場面及び状況において,道徳的価値を実現するための適切な行為 を主体的に選択し,実践することができるような内面的資質」となって います。 つまり,外に表れた行いや行動の部分ではなく,それを選択し,実践 することのできる内面的資質なのです。
今回の学習指導要領は,「考え,議論する道徳」への転換を図るもの です。
「考え,議論する道徳」は,「多様な価値観の,時に対立がある場 合を含めて,誠実にそれらの価値に向き合い,道徳としての問題を考え 続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質である」という中央教育 審議会答申を踏まえ,これまでの道徳の時間に対して,「発達の段階に 応じ,答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の生徒が自分自身の 問題と捉え向き合う」ものとして示されたものです。
道徳の教科化に当たって,中央教育審議会が示した,発達の段階など を十分に踏まえず,児童生徒に望ましいと思われる分かりきったことを 言わせたり書かせたりする授業や,読み物の登場人物の心情理解のみに 偏った形式的な指導が行われる例があるといったことは,「読む道徳」 として,乗り越えていかなければならない課題です。
つまり、「読む道徳」を「考え,議論する道徳」へと転換していくことが,私 たちに求められているのです。
審議会の教育課程企画特別部会で示された「三つの学び」を考えるとよ いでしょう。
それは,「主体的・対話的で深い学び」です。
「主体的な学び」は,自分にとって「あれっ!」「どうしてかな?」と 課題をもち,その解決を目指すなかで得られる学びです。
「対話的な学び」は,一人で考えていては分からなかったけれど,みんなで考えていくなかで得られる学びです。
「深い学び」とは,子どもたちがこれまで考えたことがなかった。しかし,考えてみれば「なるほど」と思える深い理解が得られる学びです。
「考え,議論する道徳」は,これからの新しい学習指導要領が目指す 学びを先取りしたものです。
「読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われる例がある。」ことは,中央教育審議会が挙げた道徳の授業の課題です。この課題は「道徳の時間と国語の時間の違いが分からず,国語的な指導になってしまう。」という声からも,現場の先生方がずっと悩んできたことでもあります。
ところで,道徳科の授業で取り上げる道徳的な問題は,具体的な場面を通す とよく見えます。だから,読み物教材を使うことが多いのです。さらに,道徳的な問題や,それを解決していくための道徳的価値の大切さは,教材の登場人物の心情や考えの中に含まれています。そのため,登場人物の心情理解という活動が必要です。
問題は,例えば,登場人物が「親切っていいな。」と思った心情に共感し、それで授業のねらいに近づいたと思い込んでしまうことなのです。
その原因として,ねらいが漠然としていることが挙げられます。
「親切の大切さに気づく」といったねらいです。
道徳科の授業のねらいは,その「大切さ」 の中身にあります。「親切は,相手も自分も,そして周りにいる人たちみんな を温かい気持ちにしてくれる,とてもいいものだな。」などと,道徳的価値の 大切さに踏み込んだ学習になることが重要です。
読み物教材の話の内容を理解 することが目的ではなく,それを通して私たち自身の生き方や考え方,感じ方を見つめることにねらいがあります。
発達の段階を考えながら,その教材を使った授 業のねらいを具体的に設定するとともに,ねらい に近づいたときの子どもたちの意識を子どもの言 葉で想定しておくことが,心情理解のみに偏る授 業を克服していくことにつながるでしょう。
例えば,「親切,思いやり」について言えば,発達の段階に応じて,次のよ発達段階を踏まえる うなねらいが想定されます。
低学年......親切は,相手も自分も,周りにいる人たちみんなが温かい気持ち になる。中学年......思いやりとは,相手の気持ちを自分のことのように考え,もし自 分だったらこうして欲しいだろうなと思うことを届けることである。
高学年......思いやりは,相手の気持ちを理解するだけでなく,さらに,どの ようにすることが相手にとって大切なのかまでを考えることが大事である。
中学校......本当の思いやりとは,相手のことを最大限に思う思いやりであり, それは,例えば相手に気遣いをさせない,さりげない思いやりな どがそうである。
これらを見ると,すべて,「親切の大切さ」です。しかし,内容は,学年によっ て違うことが分かります。 「親切,思いやり」の授業を,「親切って大切だ」という内容で行えば,当然, どの学年の子どもも,分かりきったことになります。また,高学年の授業が, 低学年や中学年の内容を扱うものであったなら,これもまた,分かりきったこ とを言わせたり書かせたりする授業になってしまいます。 発達の段階をしっかりと考え,ねらいを設定していくことが大切です。
「書く」活動は,学習指導要領にも,「自分の考えを基に討論したり書いたり 充実のために するなどの言語活動を充実すること」とあるように,大切な学習活動です。
「書く」活動のメリットとデメリットをよく考えて,うまく活用しましょう。
まず,メリットです。「書く」活動は,「言語活動」ですから,書くことによって思考を深めることができます。「どんなことを考えますか。」と問われると私たちは,ぼんやりと考えます。
「発表してください。」と言われると,頭が回 転し始めます。さらに「書いてください。」と言われると,頭をフル回転させ, 考えを整理しながら,順序立てて表現していくのです。 さらに,「書く」活動は,教師にとっては,一人一人の子どもが何を考えて いるのかを見取りやすくなります。そして,意図的な指名を行うことで,授業 を深めていくことができるのも,「書く」活動のメリットです。
ねらいに近づく意見は,子どもたちの集団の中では,「小さな」意見です。 なぜなら,「大きな」意見,すなわち,多くの子どもたちから出てくる意見は, すでに子どもたちの考え方や価値観となっているものだからです。それらは,「間違い」ではありませんが,「ねらい」ではありません。
道徳科の授業を深め ていくには,発問を精選するとともに,「小さな」意見が出やすいようにする ことがポイントです。
「小さな」意見は,少数意見ですから,全体の場ではなかなか出しにくいで すし,目立ちません。そこで,少人数の話し合い(グループトーク)が,効果 を発揮します。
ところで,「グループトーク」は,隣の人と意見を交 流する「ペアトーク」とは目的が異なります。
「ペアトーク」は,自分の意見を言葉にして聞いてもらい,相手の意見を聞くことで,考えを整理し,思考を深めるという 目的が大きいです。
「グループトーク」は,みんなで協力して,できるだけたくさんの意見を出すことが 大きな目的です。
実際,学習指導要領の解説には,「ペ アでの対話やグループによる話合い」となっています。 何を話し合うのかを明確にし,必然性のある話し合いにしていきましょう。 また,グループトークで出た意見を全体に出させるときも,工夫が必要です。
「グループでまとめ,代表の人が発表しなさい。」では,「小さな」意見は消えてしまいます。「グループで出た意見を,全部教えてください。」とすることで, 「小さな」意見は,「大きな」意見と肩を並べながら,全体の場に登場してくる
のです。あとは,この「小さな」意見が,「大きな」意見とどこが違うのかを 考え合うことで,ねらいに迫ることができるのです。